【レビュー紹介】藤井風「きらり」Tiny Desk Concertバージョンの衝撃──挑戦的アレンジに込めた覚悟と進化

藤井風が出演した「Tiny Desk Concert」。その中でも大きな注目を集めたのが、「きらり」のパフォーマンスです。ある熱心なリスナーは、このアレンジを“このライブ最大のハイライト”と表現し、従来の楽曲イメージを覆す挑戦的な試みに強く心を動かされたと語っています。

原曲とは真逆のテンポ設定──BPM117から76.9へ

「きらり」と言えば、BPM117のダンサブルな4つ打ちが印象的な軽快な楽曲。しかし、Tiny Deskで披露されたバージョンは、約76.9というスローテンポに大胆にアレンジされていました。ハイハットの16ビートが際立ち、原曲の軽やかな疾走感はあえて排除された構成となっています。

この極端なテンポ変更は、非常にリスキーでもあり、下手をすると単調になりかねません。実際、レビューを書いた方も「ごまかしの効かない構成の中で、藤井風がどれだけボーカルだけで魅せられるかが勝負だった」と語っており、並々ならぬ覚悟が感じられたようです。

スローなテンポが生んだ「フェイクの余白」

ライブでは、藤井風が演奏開始と同時に立ち上がり、目を閉じて即興的なピアノソロを披露。この振る舞いについて、レビューでは「単なる気まぐれではなく、テンポを体に馴染ませるための集中のプロセスだった」とされています。

そして歌が始まると、スローテンポの効果がすぐに明らかになります。テンポを約1.5倍遅くしたことで、1音1音に余白が生まれ、そのスペースを活かした繊細なフェイクが次々と織り込まれていくのです。

とくに「今一人きり さらり」という冒頭部分の表現は、「スロー再生するとフェイクの巧妙さがより鮮明に伝わる」とのこと。楽譜には到底書ききれない、自由で豊かな表現がそこにはありました。

「満ちてゆく」初披露のサプライズと、ボーカリストとしての成長

このコンサートでは、2024年3月15日にリリースされた「満ちてゆく」も初めて披露されました(収録は同年3月第1週)。多くのファンが原曲に近い演奏を予想していた中、冒頭でピアノを省き、ギターのアルペジオからスタートするという意外性のある構成に、驚きの声が上がりました。

レビューによれば、これは「ボーカルにすべてを集中するための判断」ではないかとのこと。難易度の高い「きらり」を歌い終えた直後ということもあり、ややリラックスしたムードの中で、藤井風らしい繊細かつ感情豊かな歌唱が展開されました。

とくにワンコーラス目は、ギターのバッキングのみに支えられた静かな構成で、「あれもこれもどこか置いてくる」のフレーズから、ラストの超ロングトーン、そして息継ぎなしのフェイクへと続く場面は、「ボーカリストとしての進化を象徴する瞬間だった」と高く評価されています。

世界へと響く「覚悟の一曲」

このTiny Desk Concertでの「きらり」は、単なるアコースティックアレンジではなく、音楽的再構築と強い意志が込められた作品でした。挑戦を恐れず、世界へと発信する覚悟──そのすべてが、あのスローテンポの中に刻まれていたのです。